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中東リスク・原油高・円安——「有事の相場」で個人投資家が慌てないための4つの原則

2026年06月10日 17:39

中東リスク・原油高・円安——「有事の相場」で個人投資家が慌てないための4つの原則

2026年に入り、世界の金融市場は中東情勢に大きく揺さぶられ続けています。2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃、そして3月以降のホルムズ海峡の事実上の封鎖。原油価格は一時1バレル130ドル台まで急騰し、為替もドル円が160円に迫る円安水準で推移しています。ガソリンや日用品の値上げを、生活のなかで実感している方も多いでしょう。

ニュースを見て「自分の資産は大丈夫だろうか」「いま何かした方がいいのか」と不安になった方も少なくないはずです。

しかし、こうした「有事」のときの判断こそ、その後の資産形成を大きく左右します。本記事では、今回の中東情勢を題材に、個人投資家が地政学リスクとどう向き合えばよいのか、その基本的な考え方を整理します。


いま何が起きているのか——「攻撃 → 海峡封鎖 → 原油高」の連鎖

今回の相場混乱は、いくつかの出来事が短期間に連鎖して起きました。流れを追うと理解しやすくなります。

① イランへの攻撃(2月末) 米国とイスラエルがイランの核施設・軍事拠点を空爆。中東情勢が一気に緊迫しました。

② ホルムズ海峡の事実上の封鎖(3月〜) ここがポイントです。海峡が物理的に塞がれたわけではありません。実際に船を止めたのは「保険」でした。大手の海上保険会社が戦争リスク保険の引き受けを停止したことで、保険なしでは航行できない大手海運各社が通過を停止。封鎖前は1日あたり数十隻が通っていた原油タンカーが、ほぼゼロ近くまで激減しました。

ホルムズ海峡は世界の原油の約2割が通る要衝です。ここが詰まれば、供給不安から原油価格が跳ね上がるのは当然の流れでした。

③ 原油価格の急騰 原油先物は4月上旬に一時1バレル138ドルの高値をつけました。その後いったん停戦合意に至ったものの、4月にはトランプ大統領がイラン港湾の「逆封鎖」を表明するなど、対立は長期化。2026年6月現在も原油は高止まりが続いています。

ただし国際エネルギー機関などの見通しでは、中東の生産が回復するにつれて、年後半から2027年にかけて価格は徐々に落ち着いていくと予想されています。なお日本には約8か月分の石油備蓄があり、ただちに燃料が枯渇する状況ではありません。


なぜ「株」や「為替」「金」まで動くのか

原油の話なのに、なぜ自分の持っている投資信託や株価まで動くのか——その仕組みを押さえておくと、ニュースに振り回されにくくなります。

  • 株式:原油高は輸入コストの増加を通じて企業の利益を圧迫し、同時に物価上昇(インフレ)を招きます。これが企業業績や金融政策の見通しに影響し、株価の変動要因になります。

  • 為替(円安):エネルギーの輸入額が膨らむと、その分だけ円を売ってドルを買う動きが強まります。加えて、米国の金利が高止まりする一方で日本の利上げが緩やかだと、金利差からも円安が進みやすくなります。足元ではドル円が160円をうかがう水準まで進み、政府・日銀による為替介入への警戒感も高まっています。

  • 金(ゴールド):有事やインフレ局面で買われやすい「安全資産」の代表格です。各国の中央銀行による金購入も追い風となり、価格は歴史的な高水準で推移しています。

ここで大切なのは、同じ「有事」でも資産によって動き方が逆になるということ。株が下がる局面で金が買われる、というのはまさにその一例です。この性質が、次に述べる「分散」の意味につながります。


原則1:地政学ショックは「短期」のことが多い

戦争や紛争のニュースは強烈で、つい「これは大変なことになる」と感じてしまいます。しかし過去を振り返ると、地政学的なショックは相場に急激な変動をもたらす一方で、その影響は比較的短期間で和らいでいくケースが多いのも事実です。

実際、専門家の分析でも、原油価格と日経平均株価には長期的にほとんど相関がないと指摘されています。短期的には連動して見えても、長い目で見れば、株価を決めるのはあくまで企業の稼ぐ力や世界経済全体の動向です。

短期的なショックを理由に、長期の資産運用の方針を変えてはいけない——これが第一の原則です。


原則2:「分散」こそが最大の守りになる

どの危機が、いつ、どんな形で来るかを正確に予測できる人はいません。だからこそ、一つの資産・一つの国・一つの通貨に集中させないことが重要になります。

前述のとおり、有事には株が下がる一方で金が買われるなど、資産ごとに動きが異なります。値動きの異なる資産を組み合わせて持っておけば、どこかが下がっても別のどこかが支えてくれる。これがポートフォリオ全体の値動きをなだらかにし、ショックのクッションになります。

「卵を一つのカゴに盛るな」という投資の格言は、まさにこうした有事に効いてくる知恵なのです。


原則3:時間を味方にする——「狼狽売り」が一番のリスク

有事の相場で最も避けたいのは、不安に駆られて底値で売ってしまい、その後の回復局面を取り逃すことです。多くの調査が、相場から一時的に降りて「タイミングを計る」行動は、長期では裏目に出やすいことを示しています。

むしろ、毎月一定額を積み立てる「ドルコスト平均法」のような長期・積立の手法では、価格が下がった局面はより多くの口数を買えるチャンスにもなります。値動きの荒さを、味方に変えられるわけです。

相場が荒れているときほど、売買の手を止めて、淡々と続ける。これが結果的に最も賢い選択になることが少なくありません。


原則4:暴落の「前」に計画を——自分のリスク許容度を知る

どれだけのリスクなら受け入れられるか。それを決めるべきは、危機の渦中ではなく、平時のうちです。

もし今回の混乱で夜も眠れないほど不安になったのなら、それはあなたの資産配分がご自身のリスク許容度に対してやや攻めすぎているサインかもしれません。その場合は、慌てて全部売るのではなく、落ち着いて配分を見直す。これが冷静な対応です。

「安心して持ち続けられる配分」を平時に設計しておくこと。それが、次の有事を乗り切るための最良の備えになります。


これから何に注目すればよいか

最後に、今後の相場を見るうえでのチェックポイントを挙げておきます。ただし、一つひとつのヘッドラインに過剰反応しないことが大前提です。

  • 原油の正常化の時期:ホルムズ海峡の通航回復が進むか。エネルギー機関は年後半から2027年にかけての落ち着きを見込んでいます。

  • 日銀の金融政策:6月の利上げが市場で広く織り込まれており、為替や債券への影響に注目が集まっています。

  • 為替介入のリスク:ドル円が160円に近づく局面では、当局による介入警戒が高まります。

  • 米・イラン協議の行方:対立が長引くか、収束に向かうか。


まとめ

「有事の相場」は、投資家の知識よりも、むしろ規律(ディシプリン)を試します。

分散すること。長期の視点を持つこと。自分のリスク許容度を知っておくこと。資産形成の基本は、危機が来たからといって変わるものではありません。それどころか、危機のときこそ、こうした基本の重要性が際立ちます。

ニュースは私たちの不安を煽ります。けれども、不安は最良の投資判断の敵です。大きな流れを理解したうえで、自分の決めた方針を淡々と守っていく——それが、長い目で見て資産を育てていくための、いちばん確かな道だと、私たちは考えています。